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豊崎由美の「鈍感力」メッタ斬り!

2007年4月27日TBSラジオ「ストリーム」に、トヨザキ社長こと書評家でライターの豊崎由美さんが出演、渡辺淳一の著書「鈍感力」をメッタ斬りにしました。そのオンエアをテキストに起こしましたので、アップしておきます。音声ファイルのダウンロードはこちらです。

ちなみにアマゾンの商品説明には、下記のようなことが書いてあります。

日本経済新聞朝刊に連載され好評を博した恋愛ロマン小説『失楽園』や『愛の流刑地』の作家であり、“中高年世代の恋愛のカリスマ”と呼ばれる渡辺淳一氏。本書は自らの医師時代の体験をはじめ、数々の出会いや苦い経験から導き出した“渡辺流賢く生きるヒント集”である。推奨するのは、ずばり「鈍感であり続けること」。心身の管理から人間関係や仕事に至るまで、敏感すぎる人には良い結果が訪れないことを様々な事例で結論づけていく。他人の褒め言葉に対して、すぐに図に乗るくらいがちょうどいいという。恋愛でも、鈍感でめげない男が最後に思いを遂げると説く。


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>“中高年世代の恋愛のカリスマ”と呼ばれる渡辺淳一氏。
私は聞いたことがありませんが、いつからカリスマなんて呼ばれているんでしょうか?こんな人をカリスマなんて呼んだら、そのほか大勢の真のカリスマたちに迷惑です。こんな持ち上げ方をするから、ますます本人が勘違いするのでは…?

前置きが長くなりました。トヨザキ社長のメッタ斬りを読むには、「続き」をクリックしてください。

4月27日 TBSラジオ「ストリーム」
パーソナリティ:小西克哉、松本ともこ ゲスト:豊崎由美

小西:さて、今日ぶった斬っていただくのは…?

豊崎:「愛の流刑地」って言いそうになっちゃった(笑)。「鈍感力」ですね。

小西:「愛の流刑地」でお馴染みの渡辺淳一先生のベストセラー「鈍感力」。集英社、1100円プラス税。これは何十万部売れているんですか?

豊崎:60万部越すと言われているんですよ。

小西:それはベストセラーの中で、近年の位置づけとしてどれくらいの売れ方になるんですか?

豊崎:いや、いい方ですよ、やっぱり。リリー・フランキーさんの「東京タワー」は100万部を越えましたから。あれは化け物みたいなものだったので。

小西:「(佐賀の)がばいばあちゃん」は?

豊崎:「(佐賀の)がばいばあちゃん」も累計では100万部越えているんじゃないですかね。

小西:60万部というのは、まあまあいい方…?

豊崎:だいたい文芸書で一桁違って、6万部行ってもけっこうすごいですから。

小西:フィクションの場合はね。

豊崎:これは一応ハウツウ本ではあるんですけどね。

小西:これはハウツウ本なんですか?

豊崎:そうですね。元々は小泉元首相が悪いんですね。

小西:小泉前総理が自民党の幹部の集まりで、確かこれに言及したと?

豊崎:そうです。

小西:安倍内閣の支持率低迷を受けて、「支持率は上がったり下がったりするんだから、いちいち気にするな」と言ったことが伝わった。

豊崎:そうです。

小西:それで「鈍感力が大事だよ」と言ったことから、これの売れ行きに拍車がかかったということですか?

豊崎:総理を辞めても迷惑な人ですね、本当に。

小西:(笑いながら)ねえー。

豊崎:「鈍感力」を買って読んであまつさえ感心している人はどういうところがどうかと言いますと、まず書店でこんなものを買えるということですね。恥ずかしくもなく買える。それから電車の中でカバーを見せたまま読める。

松本:私は恥ずかしかった、出せなかった。

豊崎:それだけですでに鈍感力の持ち主なので、それができる人は買って読まなくてもいいです!

小西:あー、そうかそうか。「鈍感力」という漢字3文字が明朝体でボーンと出ているものをカバーなしに読んでいるのは、もう鈍感力があるから読む必要はないわけだ。

豊崎:私なんか、こうですよ。

小西:あー、カバーをはずされてる!(笑)

松本:私は電車の中で出せなかったもん。

小西:松本さんはちゃんと読んだの?

松本:うん、でも電車ではちょっと隠した。

小西:電車ではね。お仕事とはいえ、大変だと思うんですけども。

松本:まあ、仕事だからね。

小西:どうなんでしょうね、この「鈍感力」は。初めてお聞きになった方もいらっしゃるかと思いますが。

豊崎:プロローグといたしまして、淳ちゃんというのは元々確かに鈍感力の持ち主だというのがよくわかるのが、あの人はブログをやっているんですけど。

小西:ブログ?

豊崎:はい、自分で。で、祭りが起こったことがあるんですよ。炎上といって、ワーッと書き込みがあって、いわゆる掲示板を停止しないといけないくらいになりまして。なんでかと言うと、自分が新幹線の自由席のチケットを買ったんですよ。そこは満席だったから、空いている指定席に移った。そうしたら車掌さんが見咎めた。「なんだ、しょうがないな」。普通は自由席に戻りますよね?今度はグリーン車に移った。

小西・松本:おおーっ!

豊崎:そうしたらまたそこでもダメと言われた。そこで淳ちゃんがひと言。「最近の車掌さんは頭が固くて困る」と。

小西・松本:(爆笑)

豊崎:ねーっ、金を払えと。60万部の大ベストセラーを出す金があるんだから、別に空いているところを買えばいい。

小西:買わなかったんですか?

豊崎:買わない、あくまでも買わない。

小西:それは立派なルール違反ですよねー?

松本:おかしい人ですよね。

小西:チケットを買えよと?

豊崎:そうなんです、それでブログが炎上だったんです。

小西:あー、「チケットを買えよ」と炎上したんだ(笑)。

豊崎:そう、「買え!」と。

小西:ユニークですね。これは鈍感じゃないとできないですね。

豊崎:確かにそうです。この「鈍感力」でも、本人曰く素敵な鈍感力がどれだけ人生を豊かにするかを書いてあるわけです。

松本:そのハウツウなんだ。

小西:素敵と素敵じゃない鈍感力があるんだ?

豊崎:まあ、あまり区別はついてないですけどね。

小西:善玉コレステロールと悪玉コレステロールみたいなものか。

豊崎:鈍感力さえあれば才能が開花して、血液もサラサラになり病気にもならない。もちろんガンにもなりにくい。そうすると素敵なハンターとなって異性のハートもつかむこともできる。結婚生活は安泰、国際社会で通用する人間になれる。もういいことづくし!

松本:すごーい…。

小西:ノーベル平和賞みたいなものですね。

豊崎:はい、もうすごい。ただし読んでビックリです。例証がくだらないことだらけです。

小西:へー、どんなことですか?

豊崎:例えばこの人は元々医者なんですけど、完璧に医者としてはやっていけません。五感の鈍さ、「耳なんか聴こえすぎるといいことないよ」というところがあるんですけど。聴覚のところで「聴こえすぎるとよくない。聴こえすぎるというのが高じたのが幻聴で」と書いてあるんですよ。まったく関係ないと思いますよ。

小西:そうですよね。

豊崎:幻聴は聴覚がいい人がなる病気じゃないですから。

小西:違いますよね?

豊崎:そういうことを平気で書くんですよ。

松本:医者だったのに?

豊崎:ええ。あと微妙に失礼なんです。例えば嗅覚のところ、「嗅覚が鈍いおかげで韓国料理であろうがベトナム料理であろうが、何でもよく食べる。それどころか多少変なにおいがしても平気で食べる。まさに鼻が鈍いおかげで何でも食べられて、おいしく感じられて下痢もしないのですから、一石三鳥です」。

小西:それ、主語は本人なんですか?

豊崎:そうですよ。

小西:本人のことを言っているんだ?

豊崎:他人(ひと)のこともそうですよ。つまりこの文脈は、「鼻が鈍いから食べられる料理が韓国料理とかベトナム料理」というふうにも読めるんですよ。

小西:考えてみれば、これは失礼ですよね。本来だったら、おいしいものをおいしいと思いながら食べるのが料理なんだけど。

豊崎:そうですそうです。鼻が鈍い、においがよくわからないということは、舌も鈍いということなんですよ。

小西:もちろんそうでしょうね。

豊崎:だからあり得ないんですね、言い方として。

小西:だからといって、おなかを下さないという保障はないですよね。これはまた違うところですよね。

豊崎:微妙に失礼なことが、今度は腹下し問題でやってきます。みんなで旅行に行くんですよ、なんだか知らないけど。そうしたらみんながおなかを壊したのに、あるひとりの人物だけが、おなかを壊さなかった。それで後年になって偶然このAくんと会うんですが、そのときのセリフが「この男だ。あのとき腐ったものを食べても下痢しなかったやつ。相変わらず堂々として屈託なく、どこか素敵で鈍そうです」。

一同:(大爆笑)

松本:なんだ、それ…。おかしいなぁ…(笑)。

豊崎:「もしこの後天変地異でも起きて人類のかなりが死滅するようなことがあっても、彼だけは生き残るのではないか」。これは褒めているんだか失礼なことを言っているんだか、よくわからないじゃないですか。

松本:よくわかんないなー(笑)。

小西:そういう人の方がサバイブできると?

豊崎:だからおなかなんか敏感じゃないほうがいい、腐ったものを食べても平気やっていける人間がいいと言っているわけですよ。

小西:はー、なるほどね。

松本:それを堂々とお書きになっているのねー。

豊崎:すごいですよー。

小西:それは確かに腐ったものを食べられる人はいいと思うけれど、それを鈍感力を養うということになるんですかね?

豊崎:そうなんですよー。

小西:「ばい菌か何か、適当に汚いものを食っておけ」と。

松本:「どこか素敵で鈍そうです」って…(笑)。

豊崎:「素敵で鈍そう」ですよ(笑)。

松本:不思議だなー。

豊崎:あと夫婦の話で、夫婦が揉めて、その理由が歯磨きのチューブを奥さんがグチャっとやったままなんですって。それでチューブを折りたたむのがあるじゃないですか。

小西:ちゃんと折っていくやつですね。でもそれはけっこう古いですね。今はラミネートでそんなふうにならないですから。

豊崎:それを知人の旦那から聴いた淳ちゃんは「私は笑う前に感動してしまいました。なんていい話。これをこのまま書けば、いい短編小説になります。もちろん題名は『朝のいさかい』で決まり」。

一同:(爆笑)

豊崎:…どれだけ題名力がないんだっていう…。題名力なさすぎ!(笑)

小西:直木賞の選考委員をやっているんでしたっけ?

豊崎:こんな人がやっているんですよ。「朝のいさかい」。

小西:俺も何か書こうかな?

松本:勇気づけられちゃう?

豊崎:たまんないですよ。あとこの人は老人力が高まっているので、矛盾するんですよ。例えば137ページで「知人のAさんは60歳で肝炎から肝臓ガンで侵されているのですが、『なにくそ、負けるものか』と闘争心をかきたて、毎日自営業の仕事に打ち込んでいます」。これはもちろん評価しているわけですよ。

小西:そうですね。

豊崎:それで次のページです。138ページで「そしてここで大切になるのが鈍感力です。例えガンになったところで『なにくそ、こんなやつは追い散らしてやる』と、焦らず悠々と構えて対処する」。どっちよ?

小西・豊崎:どっちなんだよ?

松本:そこ、面白い(笑)。

豊崎:表のページと裏のページで言っていることが真逆。

小西:すごいですねー、本当だ。

松本:すごい、そこは気がつかなかった。

小西:よく気がつきますねー、大変でしょう?

豊崎:大変ですよ、もう。こんなに丁寧に読んでいる人間はいませんよ、日本で「鈍感力」を。

松本:ちょっと飛ばしちゃってた。

小西:よく読んでいらっしゃる。

=長いので、後半に続く=

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